当院では、飼い主様から記載の許可を頂いた症例を随時こちらで上げさせて頂いております。
更新した際には、トップページのお知らせにてご報告致します。

猫の肛門嚢炎

肛門の左右に肛門嚢(肛門腺)という分泌液が入っている袋が一つずつあり、その袋が炎症を起こしてしまった状態を肛門嚢炎といいます。肛門をしきりに舐めたり、床に擦り付けたりする症状がみられ、悪化すると腫脹して肛門嚢が破裂し血や膿が出てくるようになります(肛門腺破裂)。病院では肛門腺絞りや肛門嚢を切開し、溜まっている貯留物を排出させたあと、洗浄し炎症をおさえる薬を充填します。一度肛門嚢炎になった子は再発も多いため、完治した後もこまめな肛門腺絞りを行うことで再発予防につながります。

猫の皮膚糸状菌症

左の写真は子猫から採材した毛の顕微鏡写真です。
青矢印の毛と比べると、赤矢印の毛は中身がつぶつぶしていて構造が壊れているのがお分かりいただけると思います。
このつぶつぶが糸状菌(カビ)です。この症例は皮膚の赤みとふけがみられました。人獣共通感染症の一つで、飼い主様にも感染する可能性があります。感染の拡大を防ぎ、治療を行っていくには環境の掃除、消毒の徹底も重要になります。
治療には、基本的には飲み薬が必要で、補助的にシャンプーや外用薬の塗布を行います。完治までには少なくとも1-2か月と時間がかかる病気です。

ウサギ

ウサギの水晶体脱臼

水晶体とはカメラのレンズの役割を担う器官で目の中でチン小帯という組織で支えられています。このチン小帯がなんらかの原因で断裂し、水晶体がはずれてしまった状態を水晶体脱臼といいます。原因としては、先天性と打撲などの外傷性で引き起こされるケースがあり、ブドウ膜炎や緑内障、白内障などを続発することが多いです。治療法は痛みや炎症の緩和を目的とした内科的治療と水晶体を摘出する外科的治療があります。強い痛みを伴っていたり、合併症を併発している場合は外科的治療を選択する必要がありますが、年齢や目の状態によっては内科的治療で経過をみることもあります。最悪の場合失明に繋がることもあるため、早期発見早期治療ができるように普段から目の様子や色などをチェックしましょう。

ウサギの涙嚢炎

涙嚢炎とは涙嚢と呼ばれる涙を溜めておく袋が炎症を起こした状態をいい、不正咬合により歯の根元が鼻涙管を圧迫することで涙嚢に涙が溜まりすぎてしまい細菌感染を引き起こすことで発症するケースが多いとされています。涙嚢に炎症や細菌感染が波及すると眼から白色の膿性の目ヤニが分泌され、涙の排泄障害を起こし流涙が持続することで目頭周辺の皮膚が炎症を起こし脱毛を呈します。治療としては鼻涙管洗浄と適切な抗菌薬の使用を中心とし、歯に異常が認められるのであれば歯科治療も行うことが望ましいとされております。普段から牧草を多く給餌させる事で、歯根の貫入による涙嚢炎の発生を予防につながります。

ウサギの毛球症

毛球症とは毛づくろいなどで口から入った毛が、胃や腸などで毛玉となって絡まってしまう状態を指し、換毛期や寒く飲水量が減少する時期に多く見られます。飲水量が少なかったりストレスや牧草不足で胃腸の動きが悪くなっていると、消化管が完全に詰まってしまい、胃に毛玉やガスがたまりすぎることで血管や肺・神経が圧迫され急死してしまう恐れもあります。一日中全くごはんを食べない・便が出ない・元気がないなどの症状がみられる場合は早急な治療が必要になります。ブラッシングだけでなく、普段から十分な牧草や水を与え、なるべくストレスを最低限に抑えてあげることが大きな予防につながります。

ウサギの膀胱結石

うさぎの尿中にはカルシウムがたくさん排泄され、それが様々な原因で石のように固まってしまうことがあり、それを結石と呼びます。膀胱に結石がある場合は尿に血が混ざる、排尿回数が増える、排尿時に力むなどの症状がみられ、尿道に結石が詰まってしまうと緊急の処置が必要になる場合もあります。小さな結石であれば自然に尿に出てくることもありますが、治療には手術が必要なこともありますのでうさぎの尿の異常や排泄行動に異常がみられる場合は早めに病院を受診されることをおすすめします。

フェレット

フェレットの副腎腫瘍

副腎とは重要なホルモンが分泌される臓器でフェレットは副腎腫瘍の発生率がとても高い動物です。原因は明らかではありませんが早期の避妊去勢手術が副腎に影響を与えていると考えられています。痒みを伴う脱毛が見られ、腹部膨満、多飲多尿や体重減少などの症状が見られます。若いうちであれば外科療法は選択肢の一つになりますが、手術後の生存率が低いため基本的には内科療法で症状をコントロールすることが望ましいです。定期的に検査をして早期発見早期治療に繋げることがとても重要とされています。

モルモット

モルモットのズツキダニ症

うさぎやモルモットに多くみられる寄生虫で、寄生されていても基本的には無害です。肉眼でも確認することができ、コショウを振りかけた状態と言われ被毛に黒いプツプツしたものがみられます。人への感染はないとされていますが、多頭飼いの場合には他の個体に感染するリスクがある点と個体の体調によっては症状が出る点から駆虫薬で治療することをおすすめしております。生活環境の見直しや普段から毛の状態を観察してあげるといいでしょう。

ハリネズミ

ハリネズミの細菌性皮膚炎

ハリネズミは足が短く、歩行中に胸やお腹に排泄物や汚れに付着してしまい細菌性皮膚炎になってしまうことが多々あります。ダニなどの寄生虫感染や真菌症、腫瘍との鑑別診断が重要とされており、細菌性皮膚炎になってしまった場合は衛生的な環境での飼育と、内服薬による治療を行います。患部を気にして自咬し悪化する場合もあるため、早期治療が重要となります。

ふらつき症候群

ふらつき症候群とはハリネズミ特有の病気で、症状としては進行性の運動失調や四肢の麻痺、排尿障害などがあります。初期症状としては丸まりにくくなったり、後ろ足がふらつく仕草が見られたりします。遺伝性疾患の可能性を示唆する報告もありますが明確な原因が判明されておらず、治療方法も対症療法や支持療法、介護がメインとなります。予後不良の病気ではありますが、早期に発見し、その子に適した食餌や生活環境を提供ことが大切とされています。

チンチラ

チンチラの真菌症

チンチラでの発症がよく見られる疾患の一つとして真菌症があります。
主に耳や鼻、手足などに症状が現れ皮膚の赤みやフケ、脱毛などがみられます。
そのような症状がみられた場合、病院では皮膚や毛を検査するほか
真菌培養の検査もおすすめしております。
ストレスや不衛生な環境が原因だとされており、人にも感染してしまう疾患です。
毎日の砂浴びと清潔な飼育環境を保つことが予防になります。

チンチラの臼歯不正咬合

チンチラはすべての歯が一生伸び続ける動物です。特に臼歯は牧草中心の食事により、適切に擦り減ることで正常な噛み合わせを保ちますが、牧草の不足や体質などの何らかの原因で噛み合わせが悪くなることがあり、それを不正咬合と呼びます。そのような状態になると歯が口の中を傷つけてしまうように伸びてしまい、食事を食べなくなったり、口を気にしたり、流涎がみられたりします。左の写真は不正咬合のチンチラの頭部レントゲン写真です。上下の歯の咬合面がガタガタしてみえるのがお分かりいただけると思います。治療は伸びている歯を削ることです。同時に全身の状態に合わせて点滴や強制給餌などを行います。チンチラの歯を削る処置は基本的には麻酔が必要です。時間の経過とともに歯が伸びてくると再度の同様の症状が出て、同様の処置が繰り返し必要になります。気になる症状があれば病院にご相談ください。

デグー

デグーの不正咬合

デグーの疾患で最も多いのが臼歯の不正咬合です。デグーに限らずうさぎやモルモットなどの動物は一生歯が伸び続ける動物のため、普段から歯をすり減らす食生活が必要です。歯の嚙み合わせが悪くなると、食欲が落ちたりよだれが出るようになります。
そのような状態になってしまった場合、伸びてしまった歯を定期的に削り、症状が出た場合は痛み止めや胃腸薬などの薬を必要に応じて処方します。予防法としては常に新鮮な牧草を硬い餌を与え、上下の歯の長さを維持することが重要です。

デグーのペニス脱

デグーのペニス脱は主に性関連の問題、外傷、尿路疾患などが原因で引き起こされ、治療法としてはペニスについている汚れを落とした後、陰茎を元に戻し、抗生物質や抗炎症薬などを服用します。自分でペニスを齧り、壊死が進行している場合は壊死部分を取り除く外科的な手術が必要になることもあります。ペニス脱を発見した場合は、状態がひどくならないうちに早めに病院での治療を推奨します。

フクロモモンガ

フクロモモンガの絞扼

フクロモモンガなどの小さい動物では毛布などの繊維が手足や尾に絡まってしまうこと(絞扼)があります。絞扼により循環が障害されると、赤く腫れ、痛みがでます。絡まっている繊維を取り除き、痛み止めのお薬などで治療を行いますが、時間経過によっては壊死を起こすこともあり、その場合は手術が必要なこともあります。小さい動物のケージ内に毛布などの布製品を入れる場合はほつれなどがないかこまめに確認しましょう。もし絞扼を見つけた場合は壊死を引き起こす可能性もあるので早めに病院の受診をお願いします。

爬虫類

グリーンイグアナの皮下膿瘍

膿瘍の多くは咬傷や掻き傷、外傷が原因で発生します。飼育環境の見直しと、抗生剤や抗菌薬などの内科的治療を行います。ただし皮下にある膿が固く集塊を形成している場合は、圧迫排膿や内服薬ではなかなか改善されないこともあり、そのような場合は外科的に固まった膿の集塊を摘出する場合もあります。

フトアゴヒゲトカゲの卵塞

卵塞は症状として食欲不振と腹部の膨らみが典型的であり、原因としては低カルシウム血症、脱水、産卵場所の欠如が挙げられます。主な治療法はカルシウム剤の注射や皮下点滴、飼育環境の見直し、産卵床の設置などが挙げられますが、それでも改善が見られない場合は、ホルモン剤の注射や手術による卵の摘出などを行います。左図の超音波検査の写真の矢印は腹部内にたまった卵を示しています。

クリプトスポリジウム症

クリプトスポリジウムとは原虫の一種で特に爬虫類に感染しやすいと言われており、感染し発症すると食欲不振や下痢、削痩、脱水、嘔吐などの症状がみられます。便検査を行って判明する場合もありますが、便検査を数回行っても見つからないことも多く、検査センターでのPCR検査で初めて判明する場合もあります。現時点では有効な治療方法はなく、抗寄生虫薬や皮下補液の投与などの対症療法で症状の軽減を試みます。治療に反応し症状が改善した個体でも感染は持続しているため、寒さや環境の変化により免疫状態が悪化すれば簡単に再発するため注意が必要です。

ヒョウモントカゲモドキの痛風

左の写真は膝関節の痛風結節とその結節にて採取した尿酸結晶です。痛風は爬虫類に多い病気の一つで、尿酸が血中で増加することで腎臓をはじめとする様々な臓器が障害を起こす状態を指します。主な症状として写真のような関節の腫れや食欲不振などが挙げられます。不適切な食事や水分不足による脱水などが原因であることが多く、治療は輸液療法と高尿酸血症治療薬の投与を行います。コオロギなどの生餌だけでなく、野菜を中心とした食事や温浴などで十分な水分量を確保する必要があります。

カナヘビの栓子詰まり

栓子とはヘミペニスの分泌液が固まったもので、プラグとも呼ばれます。栓子がヘミペニスにくっついたままだと排泄がしづらくなったり、炎症を起こし総排泄腔と周辺組織が壊死してしまうこともあります。治療としては栓子を取り除き、抗生物質の投与をします。飼育環境を常に清潔に保つことも大切です。

カメの消化管寄生虫感染

左の写真はロシアリクガメの糞便の顕微鏡写真です。楕円形のものが多数みられますがすべて寄生虫の卵です。
カメなどの爬虫類は野生の個体や海外から輸入された個体も多く、もともと寄生虫をもっていることがあり、必ずしも症状を引き起こすものではありません。何らかのストレス、体調不良などが起こると免疫が低下し、寄生虫が増えて症状を起こすことがあります。この症例は下痢もみられたので、駆虫を行いました。寄生虫感染により、食欲不振や食べるのに体重が増えないなどの症状が出ることもあります。
カメの糞便の状態や体調をよく観察して、気になることがあれば病院にご相談ください。

カメの陰茎脱

カメの陰茎は正常でも時々総排泄孔から脱出し、すぐ総排泄孔内に戻りますが、何らかの原因で戻らなくなることがあり、それを陰茎脱と呼びます。左の写真はニホンイシガメの陰茎脱の写真です。陰茎脱の状態が続くと陰茎から出血や感染を起こすことがあるので注意が必要です。陰茎以外にもカメは膀胱、メスであれば卵管などが総排泄孔から飛び出すことがあります。
早い段階で、可能であれば総排泄孔内に戻す処置を行いますが、時間が経過していたり、戻すことが困難だったりする状態であれば手術が必要なことがあります。カメのお尻から何か出ていることに気づいた場合は早めに病院を受診してください。